環維協技術部会では先進技術あるいは特徴的な技術を取り入れた廃棄物処理施設の見学研修会を実施しており、「令和7年度技術部会施設見学研修会」を下記のとおり開催しました。
1. 開催日:令和7年7月29日(火)
2. 見学施設
1) ごみ処理施設:大田清掃工場(東京二十三区清掃一部事務組合)
2) 水処理施設:有明水再生センター(東京都下水道局)
3. 参加者数
1) ごみ処理施設 27名
2) 水処理施設 26名
4. 施設および研修概要
1) 大田清掃工場(新工場)
所在地:東京都大田区京浜島3-6-1
焼却方式:全連続燃焼式火格子焼却炉(廃熱ボイラ付)
処理能力:600トン/日(300トン/日・炉×2基)
ボイラ :過熱器付自然循環式水管ボイラ
発電設備:衝動式外部抽気復水型蒸気タービン
発電定格出力:22,800kW
【研修概要】
大田清掃工場(新工場)と大田清掃工場第一工場が隣接して稼働しており、今回は新工場の方を見学させていただきました。
羽田空港の直近であるため、煙突が低く抑えられていることが印象に残る施設です。
まずは見学者説明室にて施設の概要の説明をしていただき、その後2グループに分かれて施設内の見学を行いました。見学者通路からプラットホームや中央制御室、ごみバンカ、プラント内などを見学しました。炉室等は、非常にきれいに維持されていること、また、見学者コースからは、羽田空港を一望できたことが印象的でした。見学後に見学者説明室に戻り活発な質疑応答が行われました。
2) 有明水再生センター
所在地:東京都江東区有明2-3-5
処理能力:30,000m3/日
高度処理:A₂O法+生物膜ろ過法
【研修概要】
有明水再生センターは宇宙船をイメージしたデザインが目を引く施設で、臨海副都心のクリーンセンター内に設置されている分流式汚水処理施設です。処理区域は、砂町処理区の一部との事でした。
A₂O法と生物膜ろ過法という高度処理方式を採用し、処理した水は東京湾に放流しており、また、その一部をオゾン処理や繊維ろ過処理によりさらに綺麗にし、センター内で機械の洗浄・冷却や修景用水等に使用するだけでなく、臨海副都心のビルなどのトイレ用水や東京臨海新交通臨海線の車体洗浄用水に再生水として供給していました。
施設見学は3グループに分かれて行われ、見学中にも、多くの質問が飛び交っていました。
5. おわりに
今回、東京都の2施設で施設見学研修会を開催しましたが、施設や運転維持を行っている人を直接見聞きし大変有意義な施設見学研修会となりました。
特に、空港近くに立地していることによる航空法による建物の高さ制限や、都市部ならではの処理施設を地下に建設するといった特別な条件下での建設はあまり見られない事なので新鮮に感じました。
本報告は協会誌「環境施設マネジメント 81号」に掲載予定です。
恒例行事である(一社)日本環境衛生施設工業会(JEFMA)と(一社)環境衛生施設維持管理業協会(JEMA)との技術交流会(廃棄物処理施設維持管理検討会)が、令和7年7月24日にビジョンセンターグランデ東京浜松町にて開催されました。
出席者は、JEFMA11名、JEMA17名の合計28名でした。
会議は、環境衛生施設維持管理業協会の稲田事務局長の挨拶で始まり、引き続きJEMAからの活動報告、JEFMAからの活動報告そして自由討議の順で進みました。
JEMAからの活動報告では稲田事務局長より、環維協の活動概要について説明があり、引き続き尾前技術部会長より、技術部会の役割と活動方針、組織および活動報告がありました。最後に井上安全衛生部会長から安全衛生部会活動について説明を行いました。
JEFMAからは、松本技術委員長より、技術委員会の活動報告およびトピックスの報告をいただきました。
トピックスの項目は以下のとおりです。
1.「廃棄物処理施設建設工事等の入札・契約の手引き」の改訂
2.市町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策について
自由討議ではそれぞれの説明内容の質疑応答や「廃棄物中のリチウムイオン電池の検知センサーやロボットによる分別について」、「ロボットやITVの活用による点検作業の省人化について」、「CCS、CCUの今後の動向について」、「熱中症対策としての作業環境の改善について」、「採用や退職等の人事労務管理について」および「プラントの清潔性」などに関する活発な意見交換が行われ、有意義な交流会となりました。
この会議が、関係各社間の情報の共有化はもとより会員会社内で現場総合力の向上に向けた活動につながりますように期待しております。
・日 時 : 7月16日 10:30〜11:35(技術部会全体会議)
10:20〜11:25(安全衛生部会全体会議)
13:15〜17:15(合同意見交換会)
・場 所 : 東京グランドホテル
・出席者 : 技術部会 34名、安全衛生部会 30名、合同意見交換会 74名。
午前中の「全体会議」では技術部会、安全衛生部会の基本方針と各活動グループから2025年度の活動計画について報告がありました。
午後に開催された「総括管理士会・技術部会・安全衛生部会 合同意見交換会」では笠原総括管理士会代表、尾前技術部会長および井上安全衛生部会長からそれぞれ2024年度の活動実績と2025年度の活動計画の報告がありました。
技術部会からのトピックスとして「日本環境衛生施設工業会との技術交流会報告」および「施設見学研修報告」が施設調査・関連団体グループ代表からあり、尾前技術部会長から「環維協活動活性化について」に関して講演が行われました。
安全衛生部会からは「交通安全セミナー」について中日本高速道路(株)から報告されました。
次に、三機グリーンテック?およびカワサキグリーンテック?からそれぞれ「わが社の安全衛生活動」の報告がありました。続いて、「2024年災害調査報告」に関して神鳥副部会長(調査グループ代表)から報告が行われました。
両部会長および総括管理士会代表の講評の後、意見交換会を終了しました。
わが社の安全衛生活動① わが社の安全衛生活動②
三機グリーンテック(株) 無藤 様 カワサキグリーンテック(株) 井上 様
一般社団法人環境衛生施設維持管理業協会の第十六回通常総会が7月4日(金)14時40分から、東京都港区の芝パークホテルにて開催されました。
近藤会長から「環維協では、『地域に根ざして、社会を支える環維協、より時代に合った、より社会に開かれた活動を目差す』を活動方針の元、「現場総合力の更なる向上」取組んでおります。
近年の事業環境は、物価上昇や働き手不足による雇用状況の悪化等の影響が大きく、会員各社に置かれましても非常にご苦労されています。しかしながら、環境衛生施設は市民生活の基盤であり、平素は当然として災害時などの非常事態にもその機能を維持することが求められます。
当協会の加盟会社は19社を数え、環境衛生施設の受託件数は、全国に1,084施設、17,600人を超える運転員の方々が業務に携わっています。当協会は日本の環境衛生施設の運営・維持管理における重要な役割を担っており、社会情勢、時代のニーズに応えた協会活動を今後とも維持することが求められていることがご理解頂けるものと考えております。
今後とも関係する皆様方の引続きのご指導、ご鞭撻よろしくお願いいたします。」と挨拶があり、引き続き議事に入りました。
議事では令和6年度の事業報告・決算および令和7年度の事業計画・予算が原案どおり可決承認されました。続いて現理事11名および現監事1名全員の任期満了に伴い、理事11名および監事1名が選任されました。
総会後の理事会において会長・副会長の選定が行われ、上村会長と鈴木副会長および石川副会長が選定されました。
新しく就任した上村会長から就任挨拶があり(就任挨拶は「ご挨拶」に記載)、その後、貢献者表彰に移り、特別貢献者として近藤前会長に、貢献者として7名の方に、上村会長より感謝状と記念品が手渡され、感謝の言葉がありました。
次に功労表彰では、「令和6年能登半島地震において災害廃棄物の処理等に関する支援活動」に積極的に取り組まれ、当協会の環境大臣表彰受賞につながったとして、「荏原環境プラント(株)、カナデビア環境サービス(株)、カワサキグリーンテック(株)、神鋼環境メンテナンス(株)、日鉄環境エネルギーソリューション(株)」の5社に表彰状が手渡されました。
上村会長からは今回の大臣表彰は功労表彰を受賞された5社を含め、会員会社の大規模自然災害への支援活動が高く評価されたことへの証左であると考えておりますとの言葉がありました。
講演会では国立研究開発法人 国立環境研究所 フェローの大迫政浩様から『日本型サーキュラーエコノミー・アプローチの可能性』と題して貴重な講演をいただきました。
18時からは懇親会になり、環境省 環境再生・資源循環局長の角倉一郎様からご祝辞をいただき、岡山大学 名誉教授の田中勝先生にご挨拶をいただきました。
次に、日本廃棄物団体連合会の副会長で一般財団法人 日本環境衛生センター理事長の南川秀樹様のご発声で乾杯、懇談となりました。
歓談の冒頭、環境省大臣官房審議官の成田浩司様、環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課長の杉本留三様および廃棄物適正処理推進企画官の福井和樹様からもご挨拶をいただきました。中締めは鈴木副会長が行い、盛会裡に散会となりました。
<総会会場>
<通常総会挨拶 近藤会長> <講演会 国立環境研究所 大迫フェロー>
環維協メンバーが、令和6年度能登半島地震において災害廃棄物の処理等に関する支援活動に積極的に取り組まれたことにより、環維協に対して災害対応支援環境大臣表彰状が授与されました。
表彰式は令和7年6月25日に環境省にて行われ、近藤会長が浅尾環境大臣より表彰状を受け取られました。
なお、今回の大臣表彰に関して会員会社5社より、令和6年度能登半島地震災害における被災地域支援活動や災害廃棄物受け入れ処理を実施されたと報告がありました。報告のあった5社は下記のとおりです。
・荏原環境プラント株式会社
・カナデビア環境サービス株式会社
・カワサキグリーンテック株式会社
・神鋼環境メンテナンス株式会社
・日鉄環境エネルギーソリューション株式会社
5社に対しては環維協より功労表彰を7月4日の通常総会にて授与します。
今後も、大規模自然災害発生時にはおいては、会員各社の支援活動が必要と考えられますので、その節はどうぞよろしくご協力のほどお願いいたします。
(一社)環境衛生施設維持管理業協会 広報部会では、2025年5月22 日(木)、23日(金) に島根県隠岐の島町の「島後リサイクルセンター」および「島後清掃センター」を訪問し、 「離島におけるリサイクルの実態、海洋ごみの実態と処理問題など」をテーマとして施設見学を行い ました。当日は広報部会会員12名が参加しました。
隠岐の島(地形、地理など)について
島根半島の北方、40〜80kmの日本海に浮かぶ隠岐の島は 、住民の住む4つの大きな島と、他の約180の小島からなる諸島です。円形で最も大きな島を島後、西南方向の西ノ島、中ノ島、知夫里島の3島を島前と呼びます。総面積は346km2で、人口は約13,000人。高齢化率(65 歳以上の高齢者人口)は上昇しているとのことです。隠岐の島への観光客数は、年間約50,000〜60,000人で推移しています。
隠岐の島はユネスコの世界ジオパークに認定されており、地球のプレート活動や火山活動などによって造られた「大地の成り立ち」、その大地の上に育まれた「独自の生態系」、私たちの歴史や文化といった「人の営み」をひとつの物語として知ることができる地域です。そして、隠岐の島の 島後に所在する隠岐空港も「隠岐世界ジオパーク空港」の名が付されています。
施設見学および全体会議
5月22日(木)は、島後の「隠岐世界ジオパーク空港」からレンタカーで移動して、隠岐の島町のごみ焼却施設である「島後清掃センター」の見学を行った後、隠岐の島町役場に伺い、広報部会の全体会議と本誌の編集会議を行いました。
残念ながら時間の関係で島後清掃センターは詳しく見学することができませんでしたが、この施設は、25t/dの焼却能力を持ち、環境に配慮した運営が行われており、エネルギー起源のCO2排出量を5%以上削減することを目指しているそうです。
その後の全体会議および編集会議では、町役場の会議室を利用させていただき、隠岐の島町環境課の原課長からご挨拶をいただくなど大変お世話になりました。
広報部会全体会議および編集会議では「環境施設マネジメント」第80号の編集企画会議を開催し、今後の誌面作りなどについて活発な意見交換をいたしました。
会議終了後は西郷港近辺にて懇親会を行いました。
翌日の23 日( 金) には、隠岐の島町のリサイクル施設である「島後リサイクルセンター」を見学させていただきました。西郷港からレンタカーで施設に向かい、施設入場後、施設内を見学させていただきながら、竣工、運転開始から今日に至るまでの期間における施設の変遷や現在の運転管理業務、維持管理業務などの状況などについても丁寧にご説明いただきました。
この施設では離島独特の状況が数多くありましたが、特に施設の方々のチームワークの良さと中央制御室のオペレーションを女性の方が行っていたことに新鮮味を持って見学させていただきました。
こちらのリサイクル施設には海洋ごみも持ち込まれるとのことですが、これらのごみは、主にプラスチック製品や漁具(網、ブイなど)、生活ごみ(主に海外から)などだそうで、ごみの量の多さや大きさ、形などで対応(圧縮など)することが非常に大変でご苦労されているそうです。
近年、隠岐の島の海岸には海流(対馬海流、リマン海流など)や風の影響などで漂着する海洋ごみの増加が深刻化しているとのことです。
その後は、レンタカーで「隠岐世界ジオパーク空港」に移動し散会となりました。最後になりましたが、今回の施設見学に際しご協力いただきました、隠岐の島町の皆様、さらに、ご案内していただきました極東サービスエンジニアリング(株)、隠岐の島ハイトラスト(株)の皆様に誌面を借りてお礼申し上げます。
日 時:令和7年5月28日(水)
場 所:環維協会議室
出席者:18名 日環センター:6名、環維協:12名
日環センター(一般財団法人 日本環境衛生センター)と環維協との水処理部門に関する技術交流会が、5月28日に開催されました。
環維協は会員会社7社、12名の参加者が集まり、環境衛生施設の最新の動向を知る貴重な機会とお互いの活動報告に続き情報交換・意見交換が活発に行われ、環境衛生施設の最新の動向を知る貴重な機会となりました。
1)議題
(1) 日環センターからの活動報告
①精密機能検査業務の実施状況
②長寿命化の総合計画の実施状況
③PFI関連業務の実施状況
(2) 環維協からの報告
①環維協の組織と活動概要
②技術部会報告
③安全衛生部会報告
2)自由討議
(1)日環センターに聞いてみたい
①農業集落排水施設にし尿を投入することはできるのでしょうか。
②畜産系の汚泥について、し尿処理施設に受け入れることはできるのでしょうか。
また、畜産排水処理は一般的にどのように処理されているのでしょうか。
③海外のし尿処理事情について
④し尿を下水道に放流する施設でのノルマルヘキサン抽出物質が規制値を超過
しないための対策について
⑤ノルマルヘキサン抽出物質の分析方法について
⑥し尿処理や最終処分場での脱炭素に向けての取組みについて
⑦汚泥再生処理において資源循環を促進するための新しいアプローチや技術について
⑧豪雨災害や震災において準備しておくべき事項について
⑨し尿、汚泥再生センターの広域化、施設の集約状況について
(2) 環維協に聞いてみたい
①搬入量減少や搬入性状の希薄化が進み間欠運転を行っている施設が増えて
きている。 計画処理量を超過した投入などにより都道府県から指導を受けた
事例について
②水質汚濁防止法施行規則等の改正に伴って、放流水の基準が大腸菌群数から
大腸菌数に改められたが、自主管理はどのような対応をしているか。
③し尿・汚泥再生処理施設の維持管理人数について、AI・IoT技術の導入や働き方
改革等によってどのように変化してきているか。
④包括的民間委託における性能要件について、施設建設時の性能保証値とそれ
以外(水質汚濁防止法の規制基準や廃棄物処理法の維持管理基準値等)のどちらの
事例が多いか。
⑤社会資本整備総合推進交付金事業によるし尿受入施設の建設または管理運営の
実績はあるか。
2025年度「環境施設総括管理士」新規申請者の募集を開始しました。
同時に3年毎の登録更新者の更新手続きも受付を開始しました。
一般社団法人 環境衛生施設維持管理業協会(略称、環維協)では2025年度の「環境施設総括管理士」新規申請者および登録更新者の募集を2025年5月16日に開始いたしました。応募締切は6月6日です。
新規応募者はこのあと、論文作成要領説明会(7月14日開催)、資格認定研修会(9月4日,5日開催)、論文審査(論文は9月24日締切)および口述審査(12月4日,5日開催)を経て、2026年1月の理事会で正式に認定されます。
この環境施設総括管理士は、環境衛生施設の運転・維持管理における最上位に位置する資格と自負しており、特に論文作成には廃棄物処理施設の計画・設計から運転維持管理までの幅広い知識が必要とされます。
応募資格は環維協の会員会社に在籍し、廃棄物処理に関する技術上の業務に申請時に10年以上の経験を有し、技術士または一般財団法人日本環境衛生センターの「廃棄物処理施設技術管理士」の資格を取得したもので、環境施設総括管理士認定後に配属される部会に参加し、協会活動に積極的に参画できることなどを条件としています。多くの応募を期待しております。
応募の詳細は会員各社の協会窓口担当者へ送信しましたそれぞれの募集要項をご参照下さい。
・新規応募者の方…2025年度環境施設総括管理士 新規募集
・登録更新者の方…2025年度環境施設総括管理士 登録更新
令和7年2月26日、協会機関誌『環境施設マネジメント』の人気企画である「維持管理第一線/現場訪問記」の取材のため、大阪産業大学デザイン工学部環境理工学科3年の千代森柊吾さんが、佐賀県のクリーンヒル天山を見学しました。
「維持管理第一線/現場訪問記」は、大学生が環境施設の維持管理の現場を訪れ、学生の視点から自由にレポートする企画です。
クリーンヒル天山は、天山地区共同環境組合のごみ処理施設。全連続燃焼式ストーカ炉でで、多久市・小城市の可燃ごみを処理しています。ストーカ炉は特別な技術である水冷式を採用し、火格子の長寿命化を図っています。
当日は施設の特徴についてお話を伺った後、実際に施設内を回り、中央制御室、クレーン操作室、焼却炉、ストーカ用冷却塔、ろ過式集じん器などを間近で見学させていただきました。これまでも大学のゼミなどでごみ処理施設を複数見学してきた千代森さん。水冷式ストーカの仕組みや近年のごみ質の変化などにも興味を持ち、積極的に見学をしていました。
【施設概要】
所在地:佐賀県多久市北多久町大字小侍4644番地29
竣工:2020年3月
処理方式:全連続燃焼式ストーカ炉(水冷式)
処理規模:57t/d(28.5t/24h×2炉)
運転維持管理:三機グリーンテック(株)
千代森さんによる現場訪問記は、『環境施設マネジメント』80号(2025年9月発刊予定)に掲載します。
<施設全景> <中央制御室>
<炉室を隅々まで見学> <ストーカ炉の火を目視確認>
環維協の機関誌『環境施設マネジメント』79号を、2025年3月12日(水)に発行いたしました。
「巻頭言」は、(公社)全国都市清掃会議専務理事の金澤貞幸氏に「自治体の要請に応え、廃棄物対策を推進」と題してご執筆いただきました。
「リレー随筆」は、カナデビア環境サービス(株)の石川英司代表取締役社長が「記憶に残る出張/酒と肴にまつわる話」と題して執筆しています。
「The Voice」コーナーでは、富岡甘楽広域市町村圏振興整備組合事務局環境施設課施設係課長補佐の小野和弘氏にインタビューし、富岡甘楽 衛生管理センターについて伺いました。
「現場訪問記」では、大阪産業大学の大西航太さんが河内長野市衛生処理場を訪問し、レポートしています。
定例の「維持管理技術講座」「現場からのレポート」なども充実しています。
『環境施設マネジメント』は、協会会員以外の方にもご購入いただけます。詳細は当協会WEBの「出版物一般案内」をご覧ください。
第2回総括管理士会・技術部会・安全衛生部会全体会議、合同意見交換会および総括管理士認証式が神戸市三宮国際ビルで開催されました。
日 時:令和7年3月6日(木) 12:15〜16:40
場 所:三宮国際ビル2階会議室(神戸市)
出席者:技術部会全体会議:48名、安全衛生部会全体会議:36名、
合同意見交換会および総括管理士認証式:86名
1.技術部会全体会議
石川技術部会長より技術部会の役割・組織・活動概要について説明がありました。引き続き、技術部会の各グループ代表および各チームリーダーから、それぞれのグループ、チーム活動の詳細な報告等、年間活動の成果が発表されました。
2.安全衛生部会全体会議
井上安全衛生部会長より安全衛生部会の組織・安全成績・活動概要について説明がありました。引き続き、安全衛生部会の各グループ代表から、それぞれのグループ活動の詳細な報告等、年間活動の成果が発表されました。
3.合同意見交換会
全体会議での各部会での発表後、技術部会、安全衛生部会および総括管理士会のメンバーなどが参加して合同意見交換会が行われました。
まず、技術部会長、安全衛生部会長および総括管理士会代表から挨拶および活動報告が行われました。
個別報告として技術部会から施設調査・関連団体グループの土屋代表から水処理部門およびごみ処理部門に関する日本環境衛生センターとの技術交流会について報告されました。
安全衛生部会から「わが社の安全衛生活動」と題して、会員会社2社の事業所で取組んでいる安全衛生活動が紹介されました。
「わが社の安全衛生活動について」
JFE環境テクノロジー(株)
QSE部安全衛生管理課
課長補佐
村上 拓馬 様
「わが社の安全衛生活動について」
東京エコサービス(株)
環境技術部 事業推進課
事業推進担当課長
吉田 幸弘 様
4.総括管理士認証式
今回認定されたのは、新規総括管理士11名、更新認定者30名で、今回の登録者を含めて総括管理士の総数は123名となりました。(部門別内訳は、ごみ焼却:94名、粗大・リサイクル:14名、汚泥再生・浸出水:15名)
新規総括管理士は2日間の認定研修会を受講したうえで厳しい論文審査、口述審査に合格して、1月の理事会で承認され、今回の認証式に至りました。
認証式では近藤会長より新総括管理士一人ひとりに、また更新認定者は代表者に認定証が手渡されました。その後、新総括管理士が自己紹介と抱負を述べた後、総括管理士会代表から、下記の講評がありました。
【川端総括管理士会代表の講評】
今年度新たに総括管理士として認定された11名の 皆さん、おめでとうございます。そして大変ご苦労様でございました。また、更新認定者30名の方が総括管理士の活動を続けて頂くことに大変嬉しく、また心強く思います。
新規申請者の論文内容について簡単に触れますと、運営管理者として日常努力されている顧客満足を追求する工夫や経験の内容、労働災害のヒヤリ・ハットの認知と撲滅に関する課題回答が具体的であり関心を持ったところです。至近の運営案件はDBO方式が主流となっています。これまで自治体が中心で事業者は運転管理のみといった一辺倒から、地域住民と一体となった安全、安心、そして安定運転を完全に達成する施設管理を要求されています。このような背景と状況から皆さんにとって重要課題と認識されていることが伺えました。皆さんが主張した考えと行動を肝に銘じ、しっかりと活動して頂きたいと思います。
最後になりますが、総括管理士の皆さまには、より一層の自社での指導、支援と当協会での益々のご活躍を強くお願い申し上げます。
新総括管理士の氏名・所属会社は以下の通りです。
第33期総括管理士(新規11名)
<ごみ焼却部門>
吉田 幸弘 : 東京エコサービス(株)
佐藤 康幸 : JFE環境サービス(株)
能登 哲也 : JFE環境サービス(株)
廣瀬 朗 : JFE環境サービス(株)
藤山 和久 : (株)タクマテクノス
中村 友哉 : カナデビア環境サービス(株)
水越 芳樹 : 川重環境エンジニアリング(株)
手塚 美延 : (株)川崎技研
松山 伸哉 : (株)日本管財環境サービス
<リサイクル部門>
横井 隆士 : 極東サービスエンジニアリング(株)
<汚泥再生部門>
今田 綾介 : 浅野アタカ(株)
更新認定者(15期、18期、21期、24期、27期および30期)合計30名
・ごみ焼却部門 (20名)
・リサイクル部門 (6名)
・汚泥再生部門 (4名)
【近藤会長の講評】
当協会の総括管理士には現場総合力の向上を担う運転維持管理のエキスパートとして、運転管理のスペシャリスト育成や、質の高い運転維持管理を提供するための指導者としての役割を担っていただくことを期待しております。
総括管理士の皆さんには当協会の活動が市民生活に与える影響が大きいことをあらためて感じて頂くと共に、この従業員の方々の先鋒として活躍され、各施設における安全・安心な運転維持管理の達成に尽力願いたいと思います。
さて、近年、施設運営の受託契約では複数年契約や長期包括契約あるいはDBO契約が増加しており、長期にわたる人材確保が必要になってきていることに対して、将来にわたって働き手不足が予想されています。各プラントメーカで、運転の自動化、AI化に力を入れていますが、取り扱うものが一般廃棄物である以上、全く人の手を介さないということはなかなか難しく、少ない人員で対応することが求められてくると思われます。このことからも、現場総合力を向上させ、運転維持管理のエキスパートを育成することが必要になります。
さらにプラント設備は高度化しており、これに対応した、より高度な操業技術が必要となってきています。また、脱炭素社会形成に向けた法改正、機能増強、防災拠点化等の社会ニーズの変化に対応するため、操業技術だけでなく、最新の社会情勢や情報を入手し、施設の設計思想とのマッチングを考えていく必要があります。総括管理士の皆さんは、これらについてもご理解頂き、地域や時代の多様な要請に積極的に応えるという当協会の事業目標達成にも注力頂きたいと思います。
今後とも会員会社皆様のお力をお借りして、総括管理士の活躍する場をこれまで以上に広げていくとともに、総括管理士の資格者を増やし、技術レベルを上げ社会に認められる資格としていきたいと思います。
<近藤会長の講評>
開催日:令和7年2月20日(木 )
場 所:環維協会議室(Web会議併用)
日環センター(一般財団法人 日本環境衛生センター)と環維協とのごみ処理に関する技術交流会が、2月20日に開催されました。出席者は日環センター14名、環維協16名の合計30名(内Web参加6名)でした。
会議は日環センターの斎藤次長の挨拶で始まり、引き続き日環センターからの活動報告、環維協からの活動報告そして自由討議の順で進みました。
環境衛生施設の最新の動向を知る貴重な機会となり、お互いの活動報告に続き、「リチウムイオン電池に起因する火災」、「物価高騰のなか運営事業者としてのコスト削減のための工夫」などの情報交換・意見交換が活発に行われました。
活動報告および自由討議の終了後、懇親会では相互の有意義な技術交流会が行われました。
1)議題
(1) 日環センターからの活動報告
① 精密機能検査業務の実施状況
② 長寿命化の総合計画の実施状況
③ PFI関連業務の実施状況
(2) 環維協からの報告
① 環維協の組織と活動概要
② 技術部会報告
③ 安全衛生部会報告
2)自由討議
(1) 日環センターに聞いてみた
① プラスチック資源循環促進法の進捗状況について
② プラスチックごみの削減による炉内温度の維持と廃掃法の見直しについて
③ ごみ発電の出力制限について
④ DBO案件や長期包括運営委託の再契約について
⑤ 炉数構成とメンテナンス期間や基幹改良工事について
⑥ 能登地震復旧事業の進捗について
⑦ 廃棄物処理施設運営に関する基準、通達について
⑧ 令和7年度環境省重点施策について
⑨ 地域共生型廃棄物発電等導入事業の促進状況について
⑩ EPCにしての建設費を抑えるための方策について
(2) 環維協に聞いてみたい
① リチウムイオン電池による火災の消火について
② 物価高騰に対する運営事業者としてのコスト削減のための工夫
③ EV車の充電スタンドを設置しているごみ処理施設について
④ 2027年の蛍光灯の製造終了後の照明設備について
⑤ 人手不足の影響の中、運営事業所における運営人員の採用について
⑥ BCP(事業継続計画)について追記・改善すべき事柄について
⑦ 事業所で実施された働き方改革の事例について
⑧ DBOにおいて現契約終了後の次期契約に向けた取り組みについて
⑨ DBOについて次期契約のアドバンテージについて
1.はじめに
今年の優良事業所見学・研修会は2024(令和6)年11月15日(金)に会員会社9社、事務局ならびに受入れ事業所側を含めて総勢21名にて、静岡県伊豆市の「クリーンセンターいず」で実施されました。
伊豆市は天城山系に囲まれた伊豆半島の中央部に位置し、内陸部に狩野(かの)川が流れ、西側は駿河湾にも面している温泉と自然豊かな地域です。鎌倉時代の北条氏の本拠地であり、古い歴史を持っています。また、清涼な水を利用した最上級のワサビが有名な地であり、白びわやいちごの名産地でもあります。
当日は伊豆箱根鉄道駿豆(すんず) 線の終着駅である修善寺駅に12時45分に集合し、タクシーに分乗して、春日神社に立ち寄り、会員各社および今回の見学・研修会の安全祈願を行ったのち、クリ ンセンターいずに向かいました。
2.クリーンセンターいずの概要
1)所在地:静岡県伊豆市佐野456
2)処理能力:82t/d(41t/d×2炉)
3)炉形式:ストーカ式焼却炉
4)発電方式: 蒸気タービン発電機(最大出力1,200kW)
5)建築構造: 鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造、地上4階、地下1階
6)竣 工: 2022(令和4)年12月
3.事業所からの説明
施設の見学に先立ち、管理運営業務を受託されている荏原環境プラント(株)の関連会社である(株)いずEサービスの三澤副所長および荏原環境プラント(株)の小宮山氏から施設概要ならびに運営体制、安全衛生活動についてご説明いただきました。その後、伊豆市伊豆の国市廃棄物処理施設組合の駒坂事務局長からご挨拶をいただきました。
4.現場を視察した感想
1)見学者対応
見学者エリアは歩くと鳥のさえずりが聞こえるなど、子どもが興味を持つような作りになっていて、見学者にはリピーターもあり、伊豆市・伊豆の国市の子育て施策を意識した施設でした。見学ルートには、ごみ処理フローについて学ぶ機関車を模した木製のからくり模型が設置され、小学生などに非常に人気とのこと。また、大迫力のプロジェクションシアターで炉内・ボイラー内の動きを可視化して、シアター後に設備を効果的に見せる工夫をされていました。さらに、3Rの学び絵が壁面に描かれ、「くるくる!循環クイズ」で楽しく学べるようにされていました。
2)直接持込者への配慮
誘導路はポールを青とオレンジ色に分けて、収集車と直接持込者の動線をわかりやすくしていました。また、小型計量器を配置しており、利用者への配慮に感心しました。
5.おわりに
最後になりますが、このたびの優良事業所見学研修会を受け入れて下さった伊豆市伊豆の国市廃棄物処理施設組合、荏原環境プラント(株)、(株)いずEサービスの皆様に誌面を借りて感謝申し上げます。
また、(株)いずEサービスの三澤副所長、荏原環境プラント(株)の宮武様、小宮山様をはじめ、施設の概要説明や事業所の安全衛生活動、施設案内や質疑応答まで大変お世話になりました。
会員各社の安全衛生活動がさらに充実し、災害が無くなることを願い、研修会報告の結びとさせていただきます。
当協会の令和7年の賀詞交換会が、1月15日(水)に東京都港区の芝パークホテルで開催されました。
当日は環境省の幹部をはじめ関連団体から多くのご来賓のご出席をいただき、協会会員会社を合わせ約100名の方が参加し盛大な賀詞交換会となりました。
近藤哲也会長が新年の挨拶を行い、そのあと今年の協会の活動目標を述べました。
「現在、当協会加盟会社は20社、環境衛生施設の受託件数は全国に1,088か所、17,500人の運転員の方々が日々業務に携わっております。
本年も『地域や時代の多様な要求に積極的に応える環維協』として、日本の環境衛生施設の運転維持管理業の健全な発展と安全で安定した維持管理に貢献して参りたいと考えております。そのためにも、当協会の目的である、『会員相互の協力により、環境衛生施設の維持管理技術の研究・研鑽と安全で安定的な運営・作業管理の推進を通じて公共事業の使命に寄与すること』に基づき、『現場総合力のさらなる向上』、『事業環境変化、社会要求変化への対応』、『研修活動、広報活動への継続した取り組み』、『大規模自然災害に備え』に重点を置いた施策に取り組んで参ります。
ただ、これら施策を効果的に進めるためには、関係省庁・自治体をはじめ関係機関の皆様方のご支援、並びに会員各社のご協力とご理解が欠かせません。今後とも関係する皆様方の引き続きのご指導、ご鞭撻を心よりお願いいたします。」と決意を表明しました。
ご来賓の挨拶に移り、環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課 課長 松﨑 裕司様からお話をいただきました。
「能登半島地震から1年が経過しました。この後も昨年は多くの自然災害が発生しました。これらの災害でお亡くなくなりなられた方にお悔やみ申し上げるとともに、被災された方々にお見舞い申し上げます。
環境衛生施設維持管理業協会の皆様には日々、環境施設総括管理士制度などの様々な活動を通じ、施設管理者、技術者の育成、環境安全衛生教育、労務管理などの総合管理能力の向上に向け、多大な役割を果たしていただいていることに深く敬意を表します。
令和6年能登半島地震におきまして焼却施設、し尿処理施設が被災し、多くの施設が稼働停止となりました。早期の復旧、その他、現地支援にご尽力頂きました皆様に対してこの場をお借りしまして、深く感謝を申し上げます。
環境省では災害対応も含め、一般廃棄物の適正処理、浄化槽の適正管理を着実に行いつつ、昨年8月に閣議決定しました第5次循環型社会形成推進基本計画につきまして、国家戦略として位置づけました循環経済への移行に鋭意、取り組んでいます。
また、循環経済に関する関係閣僚会議において取りまとめました循環経済の移行加速化パッケージに基づき取り組みを推し進めていきます。
自然災害が頻繁化、激甚化している状況であり、D.Waste-Netを通じて、関係機関と連携しながら、連携強化の取組みを更に進めて参ります。
また、ごみ処理施設での火災事故が深刻な課題となっております。この火災事故で主要なものがリチウムイオン電池に起因する火災があります。環境省では実際の分別収集の見直しの技術支援や製造事業者と連携した回収体制の構築の見直しの取組みをなお一層強化し、事故防止に努めていきます。
環境衛生施設維持管理業協会にはAIを活用した自動運転、遠隔監視技術など設備維持管理の効率化、高度化に推進して頂くとともに、これまで蓄積頂きました各種技術、経験、ノウハウ、知識を最大限に活用いただき貢献いただければとますます期待しています。」
次に、(株)廃棄物工学研究所 代表で岡山大学 名誉教授の田中勝様から「2001年頃から廃棄物の排出量はだんだんと減少しています。その中で廃棄物処理に従事している人は増えています。持続可能な廃棄物処理についてはどうしたらよいのかについて、全都清の研究発表会で発表したいと思います。ご期待いただきたい。」とご挨拶をいただきました。
続いて、日本廃棄物団体連合会副会長で日本環境衛生センター理事長の南川秀樹様からご挨拶のあと、乾杯のご発声をいただき、歓談に移りました。
次に、環境省からお忙しいなかご列席いただきました環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課課長補佐の髙橋亮介様からご挨拶を頂きました。
中締めは石川副会長が行い、盛会裡に散会となりました。
環境省 環境再生・資源循環局
廃棄物適正処理推進課 松﨑 裕司 課長
『維持管理事業所における外国人社員活用の事例学習』
往訪先:JFEアーバンリサイクル株式会社
昨今の日本における外国人の正社員採用の状況は、少しずつ改善されているものの、依然として課題が残っています。日本企業は労働力不足の影響やグローバル化の進展により、外国人労働者の採用を増やしていますが、特に正社員としての採用は限定的と言っても過言ではありません。
そこで(一社)環境衛生施設維持管理業協会(以下、環維協)総務部会においては、『維持管理事業所における外国人社員活用の事例学習』を今年度のテーマとして、令和6年11月に川崎市内にあるJFEアーバンリサイクル(株)を訪問いたしました。
同社は全国に45箇所(関東には12箇所)ある、家電4品目を対象としたリサイクルプラントの一つであり、1年に70万台以上、通算1600万台もの家電を処理しており、通常の家電4品目以外にも破損や汚損で再生が難しい災害廃棄物も含めて積極的に受け入れています。
2001年の会社設立時より外国人社員を積極的に採用している同社の社員数は140名(内40名が請負業者、25名が外国人労働者)で、出身国はブラジル、ペルー、アルゼンチン、フィリピン、ナイジェリア、バングラデシュ、ネパールと様々ですが、日本人社員と外国人社員との間には壁はないと武藤社長よりご説明を頂きました。
解体管理室の神田室長より、外国人の定着率は高く在籍中の外国人社員より人材を紹介したいという申し出は多く、現在も入社を希望する外国人の方は後を絶たないとの状況をお話し頂きました。
採用時の基準については、日本語能力検定試験合格者といった基準がある訳ではなく、永住権を持つ方や日本人配偶者がいる方で安全に対する会話(コミュニケーション)ができることとしており、受け入れる現場でも案内標識や注意書きを日本語、スペイン語、ポルトガル語で作成する、日本語が堪能な外国人社員を通訳としてコミュニケーションを取る等といった工夫が見られました。
また国籍や文化、習慣の違いといった多様性の受け入れだけでなく、曜日限定社員、時間限定社員といった様々な働き方にも柔軟に対応している姿勢が、結果的に定着率の高さに繋がっているのではないかと思われます。
最後に今回の視察研修会を受け入れて下さったJFEアーバンリサイクル(株)の皆様に心より感謝申し上げます。
視察研修会の詳細については、「環境施設マネジメントNo79」(2025年3月発刊予定)に掲載しますので、一読ください。
地域や時代の多様な要請に積極的に応える環維協
― 大規模自然災害に備える ―
一般社団法人
環境衛生施設維持管理業協会
代表理事会長 近藤 哲也
新年明けましておめでとうございます。皆様には平素より当協会の諸活動に対しまして多大なるご理解とご支援を頂き、誠にありがとうございます。年頭に際し、一言ご挨拶申し上げます。
私たちの環維協は現在加盟会社が20社で、環境衛生施設の受託件数はごみ焼却施設・リサイクル処理施設・汚泥再生処理施設・浸出水処理施設などを合わせて全国に1,088施設で、そこには17,500人の運転員の方々が日々業務に携わっております。この数値を見ただけでも、当協会は日本の環境衛生施設運営の重要な役割を担っており、施設の存在する各地域の市民生活に欠かせない存在となっていることがお分かり頂けると思います。
本年も「地域に根ざして、社会を支える環維協」として、日本の環境衛生施設の運転維持管理業の健全な発展、安定した維持管理に貢献して参りたいと考えております。
そのためにも、当協会の目的である、「会員相互の協力により、環境衛生施設の維持管理技術の研究・研鑽と安全で安定的な運営・作業管理の推進を通じて公共事業の使命に寄与すること」に基づき、次の施策に取り組んで参ります。
1点目は、「現場総合力のさらなる向上」です。
「現場総合力のさらなる向上」を目指し、「現場総合力」の要素である「操業技術力」、「安全衛生推進力」、「運営管理力」の実力をさらに高める施策に取り組んで参ります。又、持続可能な社会づくりに向けた総合的な取組として、「環境持続性」「社会的包摂」「経済の発展」の3項目を意識した取組を継続すると共に、地球温暖化防止の観点からCO2排出量を減らすような施設の整備・運転管理を実現するべく、適切な維持管理を通しエネルギー使用量とCO2排出量の削減にも努めて参ります。
さらに、環境施設総括管理士を筆頭とする運転維持管理のエキスパート集団としての事業発展に引き続き取り組んで参ります。総括管理士各位には「現場総合力向上」ための指導者として、事業所の安全・安定操業と適正な運営・維持管理能力向上を図るだけでなく、環境衛生事業の推進・発展に寄与する活動の推進、資格取得後の継続的なレベルアップを通じて、広く社会に認められる活動をして頂けることを切望致します。
2点目は、「事業環境変化、社会要求変化への対応」です。
当協会を取り巻く事業環境や社会要求は時々刻々変化してきております。
環境衛生施設運営の受託契約では複数年契約や長期包括契約が増加し、新規の環境衛生施設市場においてもDBO発注が増えるなど、契約形態は大きく変化してきております。これら契約形態の変化に応じた技能向上を目指すと共に、環境衛生施設に対するエネルギー回収や資源化に対する機能増強、防災拠点としての期待に応えるべく、地域の関係者と協力した活動を進めて参ります。又、施設の運転自動化・遠隔運転監視・省力化などへの対応、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の施行等に対しても柔軟に対応することで、事業環境の変化に的確な対応を図れるよう進めて参ります。
「働き方改革」の一環として、新型コロナウイルス感染症等への対応、事業所内の労務・人事問題、定年延長、障害者雇用・職場開拓、外国人労働者雇用等の調査・研究にも取組んで参ります。これは、当協会の部会活動や事業所における女性や障害者の方々が活躍できる職場開拓の推進を通じ、「より時代に合った環維協、より社会に開かれた環維協」を目指す活動の一環としても実施して参ります。
さらに、近年は電気・燃料などのエネルギーや資機材、人件費の高騰が顕著になっており、廃棄物処理に掛かる費用が増大しております。特にDBOなどの長期に亘る契約では、当初設定した単価ではこれらを調達することが困難となることもあり、発注者側の理解を得ながら適正価格への改訂についても積極的に働きかけて参ります。
3点目は、「研修活動、広報活動への継続した取り組み」です。
事業所の最前線で活躍されている方を対象とした事業所管理者研修会を開催し、会員会社の枠を超えた研修・グループディスカッション等を通じて、今後も事業所における指導者としての能力向上を目指して参ります。さらに各種活動成果はホームページ、各種出版物を通じて社会へ還元することを進めて参ります。
これらの一環として、環境衛生施設の事業所運営における運営管理を始め、基礎的な知識・技術から具体的な施設運転・維持管理、日常の教育、技術の向上に役立てて頂くべく、「維持管理事業所運営の手引き」(運営管理・ごみ処理技術編、運営管理編・し尿処理技術編)の四訂版を販売しております。
4点目は、「大規模自然災害に備える」です。
近年大規模災害が多発しております。昨年は1月の能登半島地震により多大な被害が発生しました。また8月には日向灘地震の発生により、南海トラフ地震臨時情報が発表されました。さらに7月、8月、9月と前線と低気圧や台風による大雨が全国各地で発生し、大きな被害が生じております。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げると共に、一日も早く、日常生活が戻られることを祈念しております。
当協会は、環境省のD.Waste-Netのメンバーでもあり、このような災害が発生した場合にも、安定的に廃棄物を処理していく必要があります。さらに、廃棄物処理施設は地域の防災拠点の役割もありますから、災害が発生した場合、我々の果たす役割は大きく、常日頃から災害に備えていくとともに、地域の関係者と災害に備えた活動を進めて参ります。
当協会では大規模自然災害への備えとして広く社会に活用してもらえるように「災害調査報告」や「JEMA(環維協)版BCP」の追加、改訂版をホームページに公開しております。今年は、受託事業所のBCP作成状況アンケートの評価をおこない、BCPへ反映するとともに、災害発生時等におけるアンケート調査を行い、これらの結果を災害発生時の備えに生かせるようホームページ等で公開していきたいと考えております。
最後になりますが、当協会の活動には、関係省庁・自治体をはじめ関係機関の皆様方のご支援、並びに会員各社のご協力とご理解が欠かせません。今後とも関係する皆様方の引き続きのご指導、ご鞭撻よろしくお願いいたします。
「第37回事業所管理者研修会」がアジュール竹芝で令和6年11月7日(木)、8日(金)の2日間にわたって、受講者91名(ごみグループ76名、水グループ15名)での開催となった。
【1日目】
はじめに近藤協会会長が開講挨拶を行った。近藤会長は、「環維協の事業目的は『会員相互の協力により、環境衛生施設の維持管理技術の研究・研鑽と安全で安定的な運営、作業管理の推進を通じて公共事業の使命に寄与すること』であり、この事業所管理者研修会は会社の垣根を越えて各所属会社における指導者として、その能力のさらなる向上を目指して実施しており、各講義における貴重な情報を十分にご理解いただきたい。
また、当協会を取り巻く事業環境や社会要求は時々刻々と変化しており、時代、社会環境に即した「現場総合力」の更なる向上に寄与する情報をこの研修会で得て、各事業所における指導者としての能力を十二分に発揮し、広く地域社会に貢献して頂くことを切望する」と激励された。
続いて稲田事務局長より環維協の組織と活動概要説明があり、1日目の全体研修が始まった。
<第37回事業所管理者研修会 開講> <近藤会長 開講挨拶>
<全体研修>
特別講演 最新の廃棄物処理動向(1)
「自治体のごみ処理の現況と今後(広域化をめぐって)」
元(公社)全国都市清掃会議 技術顧問 荒井 喜久雄氏
「持続可能な処理体制の確保」「資源循環の確保」「脱炭素化」を達成するため、「広域化」が求められているという話から始まり、「市町村のごみ処理の現況」、「廃棄物処理の広域化向けた国の取組」、「広域化へ与える影響を与える要素」等をご説明され、最後に施設整備・運営の3本柱「安定性」「安全性」「効率性」に「持続可能な処理体制の確保」「資源循環の確保」「脱炭素化」の視点を付加していくことが必要であると締めくくられた。
特別講演 最新の廃棄物処理動向(2)
「プラスチック資源循環と脱炭素について」
(一財)日本環境衛生センター 環境工学第一部 次長 寺内 清修氏
プラスチック資源循環の背景として、プラスチックの問題点や気候変動問題があり、包括的に資源循環体制を強化するための廃棄物・資源循環分野の法律・計画等についてご説明された。次に、温室効果ガス排出削減技術の概要として、プラスチック類の分別収集・資源化、高温高圧ボイラによる高効率発電、CCS/CCUS技術等、およびこれらの施策による廃棄物処理施設への影響並びに課題ついて述べられ、今後は焼却施設の集約化(広域化)を進めることが課題となる、と講演を終えられた。
<荒井 喜久雄氏> <寺内 清修氏>
続いて、青木広報部会長より「広報部会のご案内」として、広報部会の活動内容、協会誌「環境施設マネジメント」の内容についての紹介があり、昼食休憩となった。
午後からは、ごみグループと水グループに分かれ専門技術講座、事業所紹介、ごみ処理・水処理Q&Aおよびグループディスカッションが行われ、1日目を終了した。
(ごみグループ)
専門技術講座(1):「ごみ処理施設の事故(リチウムイオン電池由来の発火・火災事故)」
(一財)日本環境衛生センター 環境工学第一部部長 理事 藤原 周史氏
近年、多発するリチウムイオン電池の発火・火災状況について、東京消防庁資料等によるご報告から、環境省からのリチウムイオン電池の適正処理についてご説明された。その後、市町村のトラブル事例とその対応状況と新規施設(不燃・粗大ごみ処理施設)における安全対策等についてご説明された。
・事業所紹介:「(株)川崎技研 山鹿事業所」
(株)川崎技研 所長 平川 茂幸氏
山鹿市の紹介から始まり、山鹿市環境センターの施設概要・設備概要・業務委託内容・AIごみクレーン等についてご説明された。
(水グループ)
専門技術講座(1):「し尿処理・汚泥再生処理施設に係る現代の運転管理〜社会情勢の変化への対応〜」
(一財)日本環境衛生センター 環境工学第二部 環境施設計画課 課長 小林 剛氏
運転管理に影響する要因として、社会的要因、物理的要因、経済的要因、その他要因があり、社会的要因としては、搬入条件の変化(質的・量的変動)、法改正等があり、その他各種要因について、具体的にご説明いただいた。
・事業所紹介:(株)日本管財環境サービス 浜松事業所」
(株)日本管財環境サービス 事業所長 三嶋 宏之氏
浜松市の紹介から始まり、東部衛生工場の概要説明と施設の特徴の紹介があり事業所での安全衛生活動等についてご説明された。
・ごみ処理Q&A・水処理Q&A
研修会受講者より出された質問に対しての回答説明が行われた。
・グループディスカッション
地域毎に12の班を編成して、自己紹介に続き1部は「大規模災害」、2部は「事業所の課題など」をテーマに自由に討議を行った。
<藤原 周史氏> <小林 剛氏>
<グループディスカッション> <グループディスカッション>
【2日目】
2日目は全体研修に始まり、安全衛生部会 関連部署グループの吉田幸弘氏が「環維協における熱中症の災害統計及び事例」と題し、2023年8月に実施したアンケート調査報告の報告をした。
専門技術講座(2):「熱中症のトピックスと対策について」
大塚製薬(株) 首都圏第一支店 課長 堀場 和夫氏
日本体育協会(現日本スポーツ協会)が熱中症の事故対策に関する研究班を設置され、大塚製薬も1992年よりこの活動に参加し、熱中症に関する啓発活動を実施してきた。今回もその活動の一環として、熱中症のトピックスや職場における熱中症対策について講演された。
専門技術講座(3):「熱中症対策〜ファン付きユニフォームのご紹介」
ミドリ安全(株) 高井 正博氏・十時 紳一郎氏
実演を含めてファン付きユニフォームの紹介がなされた。また、注意事項として、ファン付きユニフォームを長期保管する場合は、リチウムイオン電池の性能を維持するため、フル充電状態で保管するようにとの注意があった。
<堀場 和夫氏> <高井 正博氏・十時紳一郎氏>
午前の最後として石川技術部会長より環維協技術部会の活動紹介とその成果物の報告があり、午後から、労務・安全衛生管理についてのプログラムを催し、基調講演とパネル討論が行われた。
基調講演(1):「熱中症対策を通して考える職場の人事・労務管理」
(株)OHコンシェルジュ 代表取締役(産業医) 東川 麻子氏
熱中症対策のご説明の後、様々な部下の申し出に対する対応、また、申し出てこない部下への対応など事例を交えて講演された。
基調講演(2):「労働災害を防ぐために〜元労働基準監督官の経験と想いから〜」
神鋼環境メンテナンス(株) 顧問(社会保険労務士) 茶園 幸子氏
労働基準監督官の仕事についてのご説明から、災害事例を基に労働基準監督官からみた安全対策として、「人の特性を踏まえた安全管理」を実施していくよう講演された。
基調講演に続いて「事業所の労務様管理・安全管理」及びサブテーマとして「健康上の配慮が必要な従業員への対応」「労働災害発生時の対応について」を題材に、ゲストおよびパネラーに加え受講者の質問も交えて、モデレーターの進行によってパネルディスカッションが行われた。
<東川 麻子氏> <茶園 幸子氏>
<パネルディスカッション>
最後に石川技術部会長の閉会の挨拶および修了証の授与があった。
石川部会長は「事業所管理者研修会は技術部会の全力を挙げて安全衛生部会の協力を得て開催している。皆さんがこれを活かしていただいて後進の指導とか、お客様の対応とかに役立てていただければうれしく思っています」と閉会の辞を述べた。続いて修了証を代表者に授与して、閉会とした。
<石川技術部会長 閉会挨拶> <修了証授与>
研修会の詳細については、「環境施設マネジメントNo79」(2025年3月発刊予定)に掲載しますので、一読ください。
令和6年8月23日、協会機関誌『環境施設マネジメント』の人気企画である「維持管理第一線/現場訪問記」の取材のため、大阪産業大学デザイン工学部環境理工学科3年の大西航太さんが、大阪府の河内長野市衛生処理場を見学しました。
「維持管理第一線/現場訪問記」は、大学生が環境施設の維持管理の現場を訪れ、学生の視点から自由にレポートする企画です。
河内長野市衛生処理場は、河内長野市のし尿処理施設。膜分離高負荷脱窒素処理方式で市内のし尿・浄化槽汚泥を処理しています。
当日は施設の特徴についてお話を伺った後、実際に施設内を回り、受入貯留設備、主処理設備、高度処理設備、消毒設備、汚泥処理設備、脱臭設備を間近で見学させていただきました。同処理場では、下水道の普及などにより年々搬入量が減少するなかで試行錯誤を重ね、土日は運転休止に踏み切り、安全運転を続けています。また、トラブル事例をファイルにまとめるなど、日々の運転管理にも細やかな工夫が見られます。
自宅には下水道が通っており、浄化槽のことはほとんど知らなかったという大西さん。「実際にきれいになっていく処理水を見ながら説明していただき、わかりやすかった。トラブル対応の工夫が参考になった」と、手ごたえを感じていました。
【施設概要】
所在地: 大阪府河内長野市高向2092番地
竣工: 2001(平成13)年5月
処理方式:膜分離高負荷脱窒素処理方式
高度処理 膜分離+活性炭吸着
汚泥処理 遠心分離
消毒設備 紫外線滅菌
処理規模 36kL/d (平成25年改修後)
運転維持管理 月島ジェイテクノメンテサービス(株)
大西さんによる現場訪問記は、『環境施設マネジメント』79号(2025年3月発刊予定)に掲載します。
11月19日にホテルマイステイズ新大阪コンファレンスセンターにて当協会の西日本地区懇談会・講演会が63人の参加を得て、開催されました。
この懇談会は当協会の委員会、部会の活動報告を協会役員ならびに主として西日本地区の会員に対して行うもので、毎年この時期に開催しております。
懇談会の後には大阪産業大学 デザイン工学部 環境理工学部 准教授 花嶋 温子様による「多面的価値を創出する廃棄物処理施設−ごみ処理施設による環境教育−」と題する講演会が行なわれました。
懇談会および講演会の終了後の懇親会を開催し、花嶋准教授も参加され、会員相互の有意義な意見交換が行われました。
<大阪産業大学 デザイン工学部 環境理工学部 准教授 花嶋 温子 様>
今年度の第31回海外環境衛生施設の視察は、10月6日(日)〜12日(土)の7日間(ニース2泊、バルセロナ2泊、機内2泊)で、モナコ公国のスマモナコ廃棄物焼却発電プラント、スペインバルセロナのマレスメ統合廃棄物回収センター(廃棄物焼却発電施設とリサイクル施設(MBT施設))の2か所3施設を回る行程で実施しました。視察団は保延団長、山根副団長以下合せて11社16名に事務局1名を加え、17名の参加者となり、また現地は8日の午前を除き天気にも恵まれ、事故もなく、予定どおりの行程で視察を終え、帰国することができました。
視察の概要は以下のとおりです。(視察順)
1. スマモナコ廃棄物焼却発電プラント(SMA MNACO Weste-to-Energy Plant)/モナコ公国
運営会社はSMA(Société Monégasque d'Assainissement モナコ衛生会社)でSMEG(SociétéMonégasque del'Electricité et du Gazモナコ電力ガス会社/資本金61.05%保有)とモナコ公国(資本金23.31%保有)およびその他(資本金15.64%保有)からなる有限会社。モナコ公国はSMAに対し、その活動を実施するためにコンセッション(公共施設等運営権)を付与し、都市計画局を通じてその適用を監視している。SMAは1938年に設立され、3つの公共サービス(道路清掃、廃棄物収集、都市廃棄物および産業廃棄物の処理)を提供している有限会社で、社員数は会社全体としては300名で、本施設の勤務者は40名である。求人応募者は会社全体としては多いが、工場の運転員は技術者であり、技術者の募集をかけても応募者は少ない。
現在の焼却施設は、廃棄物発電プラントとしてはヨーロッパで3番目で、1980年に稼働し、年間80,000トンの廃棄物を焼却する能力がある。焼却施設の処理能力は110トン/日・炉×2炉で発電設備の能力は2,600Kwである。発電電力は施設の電力に使用され、余剰分は公共ネットワークを介して配電される。この供給量は、モナコ公国の公共照明の年間需要にほぼ対応している。蒸気はフォンヴィエイユ地区の公共および半公共の建物の暖房と冷房のために、2つの都市ネットワークによって分配される地域冷暖房施設へ供給されている。焼却処理に伴い発生する焼却灰はフランスへ送り、処理後高速道路の下層路盤材や埋め戻し材に使用されている。集じん灰もフランスへ送られ安定化処理後埋め立てられている。なお、現在の焼却施設では、モナコの廃棄物30,000トンと近隣自治体の廃棄物取集やリビエラ・フランセ共同体からの廃棄物15,000トンで、年間45,000トンの廃棄物を処理している。
廃棄物焼却処理施設はフォンヴィエイユ地区(新興地区)の中心部に位置し、隣接する建物との違和感を生じないような外観とし、外壁は防音材で覆われ騒音の放出を抑えている。煙突は建物と一体化し外観に配慮している。建物は耐震構造で、敷地面積はわずか1,500m²となっている。なお、現施設は稼働開始から40年過ぎているので、SMAは廃棄物処理・回収センターが建設される2030年まで、施設の寿命を延長し、適切な運転と安全性を確保するための作業を続けている。
現在、10年後の稼働開始を目指し、建替を検討している。建屋は高さ100mの高層ビルで、処理量は50,000〜60,000トン/年とし、リサイクル施設も併設される予定である。
また、SGEGとSMAは今後のモナコの廃棄物処理に関し「循環型・低炭素戦略」を公国に提案している。その内容は廃棄物発電所だけでなく、そのエネルギーを利用する都市部の冷暖房ネットワークとの新たな技術連携、この地域の建物に関するエネルギー政策の転換、廃棄物の回収・回収に関する新たな優先ルールなどが含まれている。その目的は、この地域の建物のエネルギー生産と工場建設に使用される資材の側面から、「循環型経済」に近づけることにあるとのこと。
【モナコ公国】国土面積 2.02Km²、人口 39,000人(2020年)、通貨 ユーロ、
地方行政区分:市町村のような地方公共団体はなく、4つの地区(カルティエ)に分けられている。
・モナコ市街地区(宮殿・政府のある中信地区で、事実上の首都)
・モンテカルロ地区(カジノリゾート地区)
・ラ・コンダミーヌ地区(湾岸地区)
・フォンヴェイユ地区(新興地区) 視察先施設のある地域
廃棄物焼却発電プラント
PCI 燃料廃棄物 2,400kcal/kg 年間処埋能カ 80,000t/年
炉 数 2基 焼却方式 逆作動式火格子
焼却能力 4.6t/h・炉 ボイラ蒸気発生量 13t/h×2炉
蒸気圧 蒸気温度
ボイラ— 33.6 バールー ボイラー 242℃
過熱器 28.5 バールー 過熱器 300℃
排ガス処理システム
ダスト除去/HCL・SOX除去 電気集じん器/湿式ヒュームスクラバー・ガススクラバー
脱硝 SCR(Selective catalytic Reduction)脱硝
蒸気復水器の種類 空冷コンデンサー(圧力1.4バールabs)
発電電機出力 2,600kW
2. マレスメ統合廃棄物回収センター/スペイン バルセロナ
(Centre Integral de Valorització de Residus del Maresme:マレスメインテグラルセンター)
マレスメインテグラルセンター(マレスメ統合廃棄物回収センター)は、カタルーニャ州政府が資金提供し、コンソーシアムが保有者となっている。コンソーシアムはマレスメ地域の都市廃棄物の管理と処理のために設立された行政機関であり、現在はマタロ市の公共部門に所属している。同センターは入札によりコンセッション(公共施設等運営権)を保有しているUTE TEM((Tratamientos Eco16gicos del Maresme合弁会社、コンセッション期間2010年1月1日から15年間)、がコンソーシアムの監督のもと運営を行っておりマレスメとヴァレスオリエンタル地域の約100万人の住民にサービスを提供している。
30年前のカタルーニャ州では、廃棄物はリサイクルもされず1,800箇所で埋立処分を行っており、総合的な廃棄物管理も行われていなかった。その後州政府内に環境省やARC(カタルーニャ廃棄物局)が創設され、州内の廃棄物処理方針をまとめ廃棄物の全てを管理している。なお現在、焼却処理施設はスペイン国内に10施設ありそのうち4施設がカタールニア州内に設置されており、すべてにMBT施設が併設されている。
カタルーニャ州およびマレスメ市の廃棄物処理戦略はリユースを第1とし、戸別取集を含む分別収集された粗大廃棄物の修理、清掃、コンデショニングなどのリメイクを行い中古品としてショップで販売・再使用し、廃棄物の量を減らすことにある。次に分別収集されるガラス、容器包装材、紙、段ボールは移送ステーションを経由して各々のリサイクル対応施設へ送りマテリアルリサイクルを行う。有機系廃棄物(厨芥、伐採材など)は堆肥化や有機物安定化を行う施設で堆肥や安定化有機物を製造する他、バイオメタン化施設へ送られバイオメタンを生成・精製しガスエンジン発電機の燃料として使用する。また、リユースできなかった粗大廃棄物はリサイクル可能な部材・材料を可能な限り最大限に分離し原材料としてリサイクルする。残りのものを廃棄物発電プラントにて焼却処理しエネルギー回収をおこない、埋立処分量を最小とするとしている。2011年には環境税を導入し埋立処理量の低減を図るとともに、環境インフラ等の資金として使われている。現在の環境税はごみトン当たり、埋立65.3€、焼却32.2€、リサイクル0€である。
既存のPlanta de Reciclatge i Compostatge(リサイクル・堆肥化プラント)と新しく建設されたPlantaIncineradora(焼却工場)の組み合わせは、Centre Integral de Valorització de Residus del Maresme(マレスメ統合廃棄物回収センター)と呼ばれ、1994年11月12日にオープンした。
マレスメインテグラルセンターには、まだ回収可能な材料を含む混合廃棄物等のMBTプラント、ソファや家具等の粗大廃棄物処理ライン、分別収集された有機性廃棄物、ガラス、容器包装材、紙と段ボールの移送ステーション、およびエネルギー回収施設(改良済)など、廃棄物処理のための様々な施設が含まれている。
センターでは マレスメ地域とヴァレス・オリエンタル地域から 年間19万トン以上の残留廃棄物を処理しており、有機物を含むすべてのリサイクル可能な製品からの材料の回収を優先し2023年には20,300トンの材料を回収した。その残りの廃棄物は、廃棄物発電プラントで最適なエネルギー回収をしている。
なお、MBT施設で生成された安定化有機物は、焼却施設の処理能力の関係で焼却処理はせず埋め立て処分されている。
マレスメインテグラルセンター:エネルギ一回収プラント(廃棄物焼却発電プラント)
PCI 燃料廃棄物 2,800kcal/kg 受託託契約処埋能カ 140,000t/年
ライン数 2 系列 燃焼システム 逆作動式火格子
ユニット熱容置 24,000,000kca l/h ユニット機械容量(PCI 2,800 kcal/kg) 8.57t/h
ユニット蒸気発生量 30.2t/h
蒸気圧 蒸気温度
ボイラ— 67 バールー ボイラー 283℃
過熱器 62.5 バールー 過熱器 385℃
タービン 61 バールー タービン 380℃
蒸気復水器の種類 空冷コンデンサー 発電電カ量 13.55 MW(11.25 MW+2.3 MW)
エネルギ一生産量 115,000 MWh/年 エネルギー自家消費量 30,000 MWh/年
売電量 85,000 MWh/年 電力エネルギー発生率 820 kWh/tMSW
排ガス処理システム
脱硝 尿素を用いた無触媒脱硝 SNCR(Selective non-catalytic reduction)タイプ
HCL・SOX除去 セミドライアブソ ーパー ドライコンタクトリアクター
水銀・炭化水素類除去 活性炭注入
ダスト除去 ファブリックフィルター
脱硝 NOx 低減アンモニアを含む NOx 還元型SCR(Selective catalytic Reduction)タイプ
マレスメインテグラルセンター:MBTプラント(リサイクル処理プラント)
処理能力:190,000トン/年 稼働日数:249日/年 シフト最大時間能力:2.30 トン/h
稼働時問:平日15時間/日 7.5時間/日士躍日
材料回収効率(紙、ガラス、金属、プラスチックなど): 8.5%
回収された有機物(MOR): 40% 燃料(可燃性)廃棄物:55%
全ての視察先で、事業の成り立ち、操業体制、今後の展開等について熱心に説明があり、また質疑応答や施設見学に対応していただきました。それぞれ異なる事業主体での処理体制を視察し、その背景や考え方を知ることができ、日本との違いを含めて、今後の業務を進めていく上で、おおいに参考となる有意義な視察となりました。
視察の詳細は当協会の機関誌「環境施設マネジメント」79号(来年3月発行予定)に掲載する予定です。ぜひご一読いただければと思います。
スマモナコ廃棄物焼却発電所 スマモナコ廃棄物焼却発電所
集合写真 説明風景
スマモナコ廃棄物焼却発電所 スマモナコ廃棄物焼却発電所
説明風景 現場視察風景(中央制御室)
スマモナコ廃棄物焼却発電所 スマモナコ廃棄物焼却発電所
現場視察風景 近隣の風景
マレスメインテグラルセンター マレスメインテグラルセンター
集合写真 説明風景
マレスメインテグラルセンター マレスメインテグラルセンター
説明風景 マタロ市長から挨拶 現場視察風景
マレスメインテグラルセンター マレスメインテグラルセンター
廃棄物焼却発電プラント現場視察風景 中央制御室視察風景