今年度の第31回海外環境衛生施設の視察は、10月6日(日)〜12日(土)の7日間(ニース2泊、バルセロナ2泊、機内2泊)で、モナコ公国のスマモナコ廃棄物焼却発電プラント、スペインバルセロナのマレスメ統合廃棄物回収センター(廃棄物焼却発電施設とリサイクル施設(MBT施設))の2か所3施設を回る行程で実施しました。視察団は保延団長、山根副団長以下合せて11社16名に事務局1名を加え、17名の参加者となり、また現地は8日の午前を除き天気にも恵まれ、事故もなく、予定どおりの行程で視察を終え、帰国することができました。
視察の概要は以下のとおりです。(視察順)
1. スマモナコ廃棄物焼却発電プラント(SMA MNACO Weste-to-Energy Plant)/モナコ公国
運営会社はSMA(Société Monégasque d'Assainissement モナコ衛生会社)でSMEG(SociétéMonégasque del'Electricité et du Gazモナコ電力ガス会社/資本金61.05%保有)とモナコ公国(資本金23.31%保有)およびその他(資本金15.64%保有)からなる有限会社。モナコ公国はSMAに対し、その活動を実施するためにコンセッション(公共施設等運営権)を付与し、都市計画局を通じてその適用を監視している。SMAは1938年に設立され、3つの公共サービス(道路清掃、廃棄物収集、都市廃棄物および産業廃棄物の処理)を提供している有限会社で、社員数は会社全体としては300名で、本施設の勤務者は40名である。求人応募者は会社全体としては多いが、工場の運転員は技術者であり、技術者の募集をかけても応募者は少ない。
現在の焼却施設は、廃棄物発電プラントとしてはヨーロッパで3番目で、1980年に稼働し、年間80,000トンの廃棄物を焼却する能力がある。焼却施設の処理能力は110トン/日・炉×2炉で発電設備の能力は2,600Kwである。発電電力は施設の電力に使用され、余剰分は公共ネットワークを介して配電される。この供給量は、モナコ公国の公共照明の年間需要にほぼ対応している。蒸気はフォンヴィエイユ地区の公共および半公共の建物の暖房と冷房のために、2つの都市ネットワークによって分配される地域冷暖房施設へ供給されている。焼却処理に伴い発生する焼却灰はフランスへ送り、処理後高速道路の下層路盤材や埋め戻し材に使用されている。集じん灰もフランスへ送られ安定化処理後埋め立てられている。なお、現在の焼却施設では、モナコの廃棄物30,000トンと近隣自治体の廃棄物取集やリビエラ・フランセ共同体からの廃棄物15,000トンで、年間45,000トンの廃棄物を処理している。
廃棄物焼却処理施設はフォンヴィエイユ地区(新興地区)の中心部に位置し、隣接する建物との違和感を生じないような外観とし、外壁は防音材で覆われ騒音の放出を抑えている。煙突は建物と一体化し外観に配慮している。建物は耐震構造で、敷地面積はわずか1,500m²となっている。なお、現施設は稼働開始から40年過ぎているので、SMAは廃棄物処理・回収センターが建設される2030年まで、施設の寿命を延長し、適切な運転と安全性を確保するための作業を続けている。
現在、10年後の稼働開始を目指し、建替を検討している。建屋は高さ100mの高層ビルで、処理量は50,000〜60,000トン/年とし、リサイクル施設も併設される予定である。
また、SGEGとSMAは今後のモナコの廃棄物処理に関し「循環型・低炭素戦略」を公国に提案している。その内容は廃棄物発電所だけでなく、そのエネルギーを利用する都市部の冷暖房ネットワークとの新たな技術連携、この地域の建物に関するエネルギー政策の転換、廃棄物の回収・回収に関する新たな優先ルールなどが含まれている。その目的は、この地域の建物のエネルギー生産と工場建設に使用される資材の側面から、「循環型経済」に近づけることにあるとのこと。
【モナコ公国】国土面積 2.02Km²、人口 39,000人(2020年)、通貨 ユーロ、
地方行政区分:市町村のような地方公共団体はなく、4つの地区(カルティエ)に分けられている。
・モナコ市街地区(宮殿・政府のある中信地区で、事実上の首都)
・モンテカルロ地区(カジノリゾート地区)
・ラ・コンダミーヌ地区(湾岸地区)
・フォンヴェイユ地区(新興地区) 視察先施設のある地域
廃棄物焼却発電プラント
PCI 燃料廃棄物 2,400kcal/kg 年間処埋能カ 80,000t/年
炉 数 2基 焼却方式 逆作動式火格子
焼却能力 4.6t/h・炉 ボイラ蒸気発生量 13t/h×2炉
蒸気圧 蒸気温度
ボイラ— 33.6 バールー ボイラー 242℃
過熱器 28.5 バールー 過熱器 300℃
排ガス処理システム
ダスト除去/HCL・SOX除去 電気集じん器/湿式ヒュームスクラバー・ガススクラバー
脱硝 SCR(Selective catalytic Reduction)脱硝
蒸気復水器の種類 空冷コンデンサー(圧力1.4バールabs)
発電電機出力 2,600kW
2. マレスメ統合廃棄物回収センター/スペイン バルセロナ
(Centre Integral de Valorització de Residus del Maresme:マレスメインテグラルセンター)
マレスメインテグラルセンター(マレスメ統合廃棄物回収センター)は、カタルーニャ州政府が資金提供し、コンソーシアムが保有者となっている。コンソーシアムはマレスメ地域の都市廃棄物の管理と処理のために設立された行政機関であり、現在はマタロ市の公共部門に所属している。同センターは入札によりコンセッション(公共施設等運営権)を保有しているUTE TEM((Tratamientos Eco16gicos del Maresme合弁会社、コンセッション期間2010年1月1日から15年間)、がコンソーシアムの監督のもと運営を行っておりマレスメとヴァレスオリエンタル地域の約100万人の住民にサービスを提供している。
30年前のカタルーニャ州では、廃棄物はリサイクルもされず1,800箇所で埋立処分を行っており、総合的な廃棄物管理も行われていなかった。その後州政府内に環境省やARC(カタルーニャ廃棄物局)が創設され、州内の廃棄物処理方針をまとめ廃棄物の全てを管理している。なお現在、焼却処理施設はスペイン国内に10施設ありそのうち4施設がカタールニア州内に設置されており、すべてにMBT施設が併設されている。
カタルーニャ州およびマレスメ市の廃棄物処理戦略はリユースを第1とし、戸別取集を含む分別収集された粗大廃棄物の修理、清掃、コンデショニングなどのリメイクを行い中古品としてショップで販売・再使用し、廃棄物の量を減らすことにある。次に分別収集されるガラス、容器包装材、紙、段ボールは移送ステーションを経由して各々のリサイクル対応施設へ送りマテリアルリサイクルを行う。有機系廃棄物(厨芥、伐採材など)は堆肥化や有機物安定化を行う施設で堆肥や安定化有機物を製造する他、バイオメタン化施設へ送られバイオメタンを生成・精製しガスエンジン発電機の燃料として使用する。また、リユースできなかった粗大廃棄物はリサイクル可能な部材・材料を可能な限り最大限に分離し原材料としてリサイクルする。残りのものを廃棄物発電プラントにて焼却処理しエネルギー回収をおこない、埋立処分量を最小とするとしている。2011年には環境税を導入し埋立処理量の低減を図るとともに、環境インフラ等の資金として使われている。現在の環境税はごみトン当たり、埋立65.3€、焼却32.2€、リサイクル0€である。
既存のPlanta de Reciclatge i Compostatge(リサイクル・堆肥化プラント)と新しく建設されたPlantaIncineradora(焼却工場)の組み合わせは、Centre Integral de Valorització de Residus del Maresme(マレスメ統合廃棄物回収センター)と呼ばれ、1994年11月12日にオープンした。
マレスメインテグラルセンターには、まだ回収可能な材料を含む混合廃棄物等のMBTプラント、ソファや家具等の粗大廃棄物処理ライン、分別収集された有機性廃棄物、ガラス、容器包装材、紙と段ボールの移送ステーション、およびエネルギー回収施設(改良済)など、廃棄物処理のための様々な施設が含まれている。
センターでは マレスメ地域とヴァレス・オリエンタル地域から 年間19万トン以上の残留廃棄物を処理しており、有機物を含むすべてのリサイクル可能な製品からの材料の回収を優先し2023年には20,300トンの材料を回収した。その残りの廃棄物は、廃棄物発電プラントで最適なエネルギー回収をしている。
なお、MBT施設で生成された安定化有機物は、焼却施設の処理能力の関係で焼却処理はせず埋め立て処分されている。
マレスメインテグラルセンター:エネルギ一回収プラント(廃棄物焼却発電プラント)
PCI 燃料廃棄物 2,800kcal/kg 受託託契約処埋能カ 140,000t/年
ライン数 2 系列 燃焼システム 逆作動式火格子
ユニット熱容置 24,000,000kca l/h ユニット機械容量(PCI 2,800 kcal/kg) 8.57t/h
ユニット蒸気発生量 30.2t/h
蒸気圧 蒸気温度
ボイラ— 67 バールー ボイラー 283℃
過熱器 62.5 バールー 過熱器 385℃
タービン 61 バールー タービン 380℃
蒸気復水器の種類 空冷コンデンサー 発電電カ量 13.55 MW(11.25 MW+2.3 MW)
エネルギ一生産量 115,000 MWh/年 エネルギー自家消費量 30,000 MWh/年
売電量 85,000 MWh/年 電力エネルギー発生率 820 kWh/tMSW
排ガス処理システム
脱硝 尿素を用いた無触媒脱硝 SNCR(Selective non-catalytic reduction)タイプ
HCL・SOX除去 セミドライアブソ ーパー ドライコンタクトリアクター
水銀・炭化水素類除去 活性炭注入
ダスト除去 ファブリックフィルター
脱硝 NOx 低減アンモニアを含む NOx 還元型SCR(Selective catalytic Reduction)タイプ
マレスメインテグラルセンター:MBTプラント(リサイクル処理プラント)
処理能力:190,000トン/年 稼働日数:249日/年 シフト最大時間能力:2.30 トン/h
稼働時問:平日15時間/日 7.5時間/日士躍日
材料回収効率(紙、ガラス、金属、プラスチックなど): 8.5%
回収された有機物(MOR): 40% 燃料(可燃性)廃棄物:55%
全ての視察先で、事業の成り立ち、操業体制、今後の展開等について熱心に説明があり、また質疑応答や施設見学に対応していただきました。それぞれ異なる事業主体での処理体制を視察し、その背景や考え方を知ることができ、日本との違いを含めて、今後の業務を進めていく上で、おおいに参考となる有意義な視察となりました。
視察の詳細は当協会の機関誌「環境施設マネジメント」79号(来年3月発行予定)に掲載する予定です。ぜひご一読いただければと思います。
スマモナコ廃棄物焼却発電所 スマモナコ廃棄物焼却発電所
集合写真 説明風景
スマモナコ廃棄物焼却発電所 スマモナコ廃棄物焼却発電所
説明風景 現場視察風景(中央制御室)
スマモナコ廃棄物焼却発電所 スマモナコ廃棄物焼却発電所
現場視察風景 近隣の風景
マレスメインテグラルセンター マレスメインテグラルセンター
集合写真 説明風景
マレスメインテグラルセンター マレスメインテグラルセンター
説明風景 マタロ市長から挨拶 現場視察風景
マレスメインテグラルセンター マレスメインテグラルセンター
廃棄物焼却発電プラント現場視察風景 中央制御室視察風景