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第29回海外環境衛生施設視察を実施2019年11月12日




今年度の第29回海外環境衛生施設の視察は、10月6日(日)〜14日(月)の9日間(ベルン3泊、ウイーン3泊、機内2泊)で、スイス、オーストリアのごみ焼却施設、リサイクル施設、下水処理施設の5施設を回る行程で実施しました。

視察団は﨑山団長、宮本副団長以下合せて13社23名に事務局1名を加え、24名の参加者となり、また現地は4日目を除き天気にも恵まれ、事故もなく、予定どおりの行程で視察を終え、帰国することができました。

視察の概要は以下のとおりです。(視察順)
1.フォルストハウスごみ処理・発電所(ENERGY CENTER FORTHAUS)/ベルン(スイス)
2013年3月施設稼働 Energie Wasser Bern(ewb)運営形態:ベルン市100%出資の有限会社
ベルン市では、7万世帯、8,000の中小企業および100名の主要顧客のために、エネルギーと水の供給、ならびに廃棄物のリサイクルを行っている。フォルストハウスは、コンペによる入札で船に似たデザインが採用され、全長310m、幅40m、煙突高さ70mの壮大な建築物で総工費は5億スイスフラン(約540億円)である。

フォルストハウスは、ごみ焼却炉(ボイラ)、木質バイオマス焼却炉(ボイラ)、ガスタービン(排熱ボイラ)が組み合わされた高効率の発電設備を有し、ベルン市域に電気74MW(市需要の約3分の1)、地域暖房50MW(市需要の30%)、蒸気2〜3MW(市需要の12%)を供給している。
熱需要の大きい冬は熱需要が多くなるよう運転されている。

ガスタービンと木質バイオマスボイラは熱需要のピークカット機能も担っている。
運転員は計48名(4交代)で、設備の定期補修期間は、木質バイオマス系は4週間、ごみ焼却系列は3週間を設けており、どちらも1炉であるが上手く運用できている。
又、フォルストハウスから約4.5km離れたARAベルン下水処理場に蒸気を送り、汚泥の嫌気性発酵処理に利用されている。
後工程で発生するメタンガス(メタン純度99%)がベルン市で運行する市バス100台の燃料として活用され、ディーゼルエンジンの燃料節約に寄与している。

2.ARAベルン(ARA BERN )下水処理場/ベルン(スイス)
1967年創立 従業員数:31名 運営形態: ベルン地域の地方自治体(市町村と関連機関)が出資した株主共同体によって所有 される株式会社
ベルンノイブリュック市下水処理場は1967年に操業を開始し,1996年に「ARA REGION BERN AG」という会社名に変わる。株主共同体エリアの世帯と商業および産業施設の廃水を浄化処理し、下水汚泥は産業で利用している。

このサービスを10の共同体コミュニティのほか、周辺にある3つのコミュニティとつながっている住民や企業に提供している。それは約410,000人口相当の下水負荷を処理している。
ARA ベルンプラントは、500,000 人口相当の下水負荷用に設計されている。

資本金は6000万スイスフランで、アルメンディンゲン(Allmendingen)、ベルン(Bern)、ブレンガルテン(Bremgarten)、フラウエンカペレン(Frauenkappelen)、ケルサッツ(Kehrsatz)、キルヒリンダッハ(Kirchlindach)、ケーニッツ(Koniz)、メイキルヒ(Meikirch)、ムリ(Muri)、ヴァルト(Wald)の株主共同体が所有している。

さらに、ARAベルンプラントではWWTP Wohlen(ウォーレン廃水処理プラント)のスラッジおよび他のプラントのスラッジの処理とリサイクルも行っている。下水道システムの開発、保守、修理は各株主共同体によって行われている。

ARA ベルンプラントの統治機関は次のとおり、
・年次総会(総会の最高機関)21名のメンバーを含む理事会(総局の最高機関)
・7名のメンバーと3名の小委員会(人事、財務および技術)のBOD執行委員会
法律の規定に従って、これらの機関は企業目的の達成に対して責任を負っている。
運営事業の管理および執行は、運転管理会社に移管されている。

3.ユングフラウヨッホ - トップ・オブ・ヨーロッパ(JUNGFRAUJOCH - TOP OF EUROPE)
 /ユングフラウヨッホ(スイス)

ヨーロッパ最高地点の鉄道駅、標高3454mにあるユングフラウヨッホ - トップ・オブ・ヨーロッパ。駅から続くガラス張りの建物の中には全席あわせて700席以上になる5つのレストランがあり、ここには他に展望台、パレスホテル(氷の宮殿)などもある。このような標高の高い場所で問題となる施設の建設、運営がどのようにされているかを見学した。

視察内容
・ 飲料水の浄化設備 ・下水およびごみ処理・エネルギーの活用
・ アイスパレス(氷の宮殿)の空調コントロール ・ 標高3500メートルにおける建設
・ 救急・防火施設 ・ 標高3500メートルにおける調理方法

ユングフラウヨッホでは自然を生かした観光地として、施設の建設と運営がなされている。トップ・オブ・ヨーロッパは一年中雪と氷が美しい大パノラマを見ることができ、アルプスで初めてユネスコの世界遺産に登録された。

4.ウィーナー・ノイシュタット( WIENER NEUSTADT)ごみ処理場/ウィーナー・ノイシュタット(オーストリア)
創立年:1993年設立 従業員数:約120名
運営形態:2003年より有限会社となる(それ以前はウィーナー・ノイシュタット市直営)
ウィーナーノイシュタット市からの委託を受けているごみ処理場で、市民の人口は約5万人であるが周辺地域の住民を含め約13万人分のごみの処理を担っている。

以前はMBT(Mechanical Biolgical Treatmennt)処理を行っていたごみ処理場だが、現在は、様々なごみの処理とリサイクルをしており、ごみ選別、乾燥堆肥化、バイオガス(現在建設中)などの施設がある。

プラごみの選別リサイクルや、生ごみはバイオガスでのリサイクルと固形物残渣はコンポスト化し、リサイクルに不適な可燃物は、近くの自治体の焼却施設へ送られ焼却処理される。
バイオガス施設は新しく10月に稼働予定である。
ごみの収集運搬も担っており、約20台の一般ごみ収集車と6台の工場ごみ収集用コンテナを有している。

5.WIEN ENERGIEシュピッテラウ( SPITTELAU)ごみ焼却場/ウイーン(オーストリア)
シュピッテラウごみ焼却場は、1969年に竣工し、1971年に稼動を開始したごみ焼却施設である。1987年の火災により設備の多くが焼損したが、1991年には世界的に有名な芸術家 F.フンデルトヴァッサー氏により、施設の概観デザインを一新している。

当施設は住宅地に隣接しており、年間25万トンのごみを処理し、120GWhの電気と500GWhの地域暖房を生み出し、ウィーンの約50,000世帯をサポートできる施設として、深く市民に理解されている。

外観はテーマパークのパビリオンを思わせる、奇抜でごみ処理場とは思えないデザインとなっているが、ウィーン市街との融合はもちろんのこと、設備の安全性も確保している。その証拠として、煙突の先端付近では、きれいな空気でなければ棲家としないハヤブサが巣を作って繁殖していた。
外観・デザインは、「自然との調和」を目指すF.フンデルトヴァッサー氏の作品特徴のひとつである、「自然界に直線はない」という考えのもと、既定のドアや窓の枠以外には、直線のデザインが極力使われておらず、アメーバ状の色とりどりの模様がちりばめられている。後に、大阪舞洲に建てられた派手なごみ処理場の外観・デサインを手掛けたのも、 F.フンデルトヴァッサー氏である。

 全ての視察先で、事業の成り立ち、操業体制、今後の展開等について熱心に説明があり、また質疑応答や施設見学に対応していただきました。それぞれ異なる事業主体での処理体制を視察し、その背景や考え方を知ることができ、日本との違いを含めて、今後の業務を進めていく上で、おおいに参考となる有意義な視察となりました。

視察の詳細は当協会の機関誌「環境施設マネジメント」69号(来年3月発行予定)に掲載する予定です。
ぜひご一読いただければと思います。

フォルストハウスごみ処理・発電所        ARAベルン(ARA BERN )下水処理場
(ENERGY CENTER FORTHAUS)集合写真           説明風景
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ユングフラウヨッホ - トップ・オブ・ヨーロッパ   ウィーナー・ノイシュタットごみ処理場
     操作監視状況説明風景                現場視察風景
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WIEN ENERGIEシュピッテラウごみ焼却場   WIEN ENERGIEシュピッテラウごみ焼却場
        集 合 写 真                       中央制御室
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