「第35回事業所管理者研修会」がアジュール竹芝で令和4年11月24日(木)、25日(金)の2日間にわたって開催された。今回は受講者を76名(ごみグループ65名、水グループ11名)に絞り、十分なコロナ対策を実施しての開催となった。
【1日目】
はじめに﨑山協会会長が開講挨拶を行った。﨑山会長は、「環維協の事業目的は『会員相互の協力により、環境衛生施設の維持管理技術の研究・研鑽と安全で安定的な運営、作業管理の推進を通じて公共事業の使命に寄与すること』であり、本日出席の皆様にとって、この事業所管理者研修会が今後の活躍に役立ち、また、会社の垣根を越えた環維協の一員として視野と知識を広げ、技術の研鑽を図り、広く地域社会に貢献していただくことを期待する。」と激励された。
続いて稲田事務局長より環維協の組織と活動概要説明があり、1日目の全体研修が始まった。
<﨑山会長 開講挨拶> <全体研修>
(全体研修)
◆特別講演:最新の廃棄物処理動向(1)「自治体から見た廃棄物処理施設の運営・維持管理の状況と課題」
(公社)全国都市清掃会議 技術顧問 荒井 喜久雄氏
『ごみ処理施設の整備に向けた国の施策』から始まり、その施策対しての整備・運営の課題として、日本の人口の長期的減少・PFI等の新しい事業方式採用・プラスチック資源循環とカーボンニュートラルについて講演され、最後に受講者に対して『長は夢‐目標を語ろう。』との言葉で講演を締めくくられた。
◆特別講演:最新の廃棄物処理動向(2)「脱炭素社会を目指す政策への廃棄物処理の貢献」
(一財)日本環境衛生センター 環境事業本部 特別参事 村岡 良介氏
地球温暖化の現状説明から始まり、いろいろな脱炭素社会を目指す政策および地球温暖化対策計画についてご説明された。その後廃棄物処理施設における脱炭素対策について省エネルギー対策を中心に事例を含めて講演された。
その後、青木広報部会長による協会誌である環境施設マネジメントと環維協のホームページについての紹介があり昼食休憩となった。
<荒井 喜久雄氏> <村岡 良介氏>
午後からは、ごみグループと水グループに分かれ専門技術講座、事業所紹介、ごみ処理・水処理Q&Aおよびグループディスカッションが行われ第1日目を終了した。
(ごみグループ)
専門技術講座(1):「減らないごみ処理施設の事故とリチウムイオン電池由来の発火・火災事故」
(一財)日本環境衛生センター 環境事業第三部 部長 藤原 周史氏
平成30年度の廃棄物処理施設の事故(事例調査結果)についてご説明され、次に近年多発するリチウムイオン電池の発火・火災について、環境省の取り組み状況、各市町村のトラブル事例とその対応状況、新規施設(不燃・粗大ごみ処理施設)における安全対策等について講演された。
・事業所紹介:「新明和ウエステック(株) 寒川作業所」
新明和ウエステック(株) 統括所長 大山 啓介氏
寒川広域リサイクルセンターの事業概要および平成24年台風18号の経験から豪雨時の対応等、運営管理における各種取り組みについてご説明された。
(水グループ)
専門技術講座(1):「し尿処理・汚泥再生処理施設に係る現代の運転管理―豪雨災害(水害)を想定した運転管理対応―」
(一財)日本環境衛生センター 環境事業第一部 次長 稲田 隆治氏
近年の代表的な自然災害による、施設の被害例をご説明の後、環境省廃棄物対策課水害廃棄物対策指針より、建物の浸水防止対策、災害時の職員行動基準、水害に対する運転管理対応等について講演された。
・事業所紹介:浅野アタカ(株) 亀山事業所」
浅野アタカ(株) 駒田 憲一氏
亀山市の紹介から始まり、亀山事業所の概要説明と事業所での安全衛生活動についてご説明された。
<藤原 周史氏> <稲田 隆治氏>
<大山 啓介氏> <駒田 憲一氏>
・ごみ処理Q&A・水処理Q&A
研修会受講者より出された質問に対しての回答説明が行われた。
・グループディスカッション
地域毎に12の班を編制して、自己紹介に続き1部は「今後の感染症対策」、2部は「事業所の課題など」をテーマに自由に討議を行った。
【2日目】
研修の2日目は、前日に引き続きごみグループと水グループに分かれ専門技術講座(2)から執り行われ、その後、専門技術講座(3)から全体研修となった。
(ごみグループ)
専門技術講座(2):「廃棄物処理施設における脱炭素への取り組み」
(一社)日本環境衛生施設工業会
日立造船(株) 環境事業本部 環境事業推進部 部長 田中 朝都氏
はじめに地球温暖化対策計画についてのご説明から、2050年カーボンニュートラルへの取り組みとして、熱利用(熱輸送)技術、二酸化炭素回収・利用技術、化学原料・化学品製造技術について、個々に今後の取り組み予定も含めご説明された。
(水グループ)
専門技術講座(2):「脱炭素社会実現を目指す政策への廃棄物処理の貢献(し尿処理施設の取り組み)」
(一社)日本環境衛生施設工業会
クボタ環境エンジニアリング(株) 水処理技術部 技術第一課 課長 佐藤 大悟氏
脱炭素社会実現に向けて廃棄物処理が与える影響から始まり、今後のし尿処理施設の取り組みとして、アンモニアセンサー、高効率散気装置、省エネ運転システム、エコ脱窒剤、脱水低含水率化等についてご説明され、最後に先端施設である『みやまバイオマスセンター』をご紹介された。
専門技術講座(3):「業務における感染症・衛生動物への対策」
(一財)日本環境衛生センター 環境生物・住環境部 部長 橋本 知幸氏
はじめに以前の熊本地震復興ボランティアに配布された感染症対策のリーフレットが紹介され、各種感染症での感染経路や病原体ついてご説明され、災害廃棄物対応時での注意事項等を講演された。
<田中 朝都氏> <佐藤 大悟氏>
<橋本 知幸氏>
午前の最後として石川技術部会長より環維協技術部会の活動紹介とその成果物の報告があり、午後から、労務・安全衛生管理についてのプログラムを催し、基調講演とパネル討論が行われた。
基調講演(1):「現場の人事・労務管理」
クボタ環境エンジニアリング(株) 総務部人事課 課長(社会保険労務士)熊谷 大氏
管理監督者を取り巻く環境変化の説明から、管理監督者として、どうあるべきかをご説明され、労務管理におけるよくあるトラブルの内容および防ぐための対応について講演された。
基調講演(2):「労働災害を防ぐために」
神鋼環境メンテナンス(株) 顧問(社会保険労務士) 茶園 幸子氏
いろいろな災害事例の紹介があり、これらの災害は人の特性(思い込み・近道行動等)によるものが多く、ヒヤリハット等を参考にし、「人の特性を踏まえた安全管理」を実施していくよう講演された。
基調講演に続いて「事業所のメンタルヘルス・高齢社員に対する対応」および「労働災害発生時の対応」を題材に、ゲストおよびパネラーに加え受講者の質問も交えて、モデレーターの進行によってパネルディスカッションが行われた。
<熊谷 大氏> <茶園 幸子氏>
<パネルディスカッション>
最後に石川技術部会長の閉会の挨拶および修了証の授与があった。
石川部会長は「研修内容は、技術講座のみならず、グループディスカッション・労務管理等普段聞けない内容にしました。皆さんの事業所運営に少しでも役立つように意図したものです。顧客にも今回の研修について誠実に報告していただきたい」と閉会の辞を述べた。続いて修了証を代表者に授与して、閉会とした。
<石川技術部会長 閉会挨拶> <修了証授与>
研修会の詳細については、「環境施設マネジメントNo75」(2023年3月発刊予定)に掲載しますので、一読ください。